●龜鳴屋―かめなくや。屋号からして凝りに凝った香りが漂っていますが、これは、金沢の小さな出版社の名前で、同社の本はすべて、ご主人の勝井隆則氏による、ほとんど手作りといってもいい装丁の本です。
●ホームページがありましたのでご覧ください。
龜鳴屋●トップページに「書店では取り扱っておりません。ご購入申し込みは、こちらへ。」という言葉があります。ということは、直接販売しかしていない出版社なんですね。超・個性派!
●驚きですね、この凝り様。本当に、心の底から本を愛する人にしかできない仕事です。
●大量出版・大量販売で生計を立てている大手出版社とまったく正反対。作家の方たちも、そんな勝井さんのポリシーや生き方に賛同して、龜鳴屋から本を出されるのでしょう。わがふるさとに、こんな個性的な出版社があるとは知りませんでした。
●書籍は、著作者である作家と、作家の原稿をデザインする編集者がいて、それをかたちにする印刷・製本屋さんがいて、それらのすべてを執り行う出版社(版元)があって、はじめて人の目に触れる本ができあがっています。
●手書きの写本時代から、江戸時代の版画出版(浮世絵)、明治以来の西洋印刷技術による大量出版、さらに最近ではインターネットによるデジタル出版、ケータイ小説のヒットなど、本の世界は技術革新によって大きな変貌をとげてきました。
●そんな時代の流れに棹をさし、いきなり紙文化の原点に立ち返らせてくれるのが、龜鳴屋の一連の書籍ですね。勝井さんの挑戦は、本当に本を愛する人たちによってこれからも支えられてゆくのでしょう。
●たしかに、私たちがこれまで買ってきた本、買いたいと思った本は、書かれてある内容によるものだけではありません。姿・形、デザイン、印刷書体、紙質など、見た目も内容も、すべてをトータルに気に入ったからこそ、欲しい、と思ったはず。
●しかし、龜鳴屋本の場合は、この装丁デザインが気に入ったから欲しい、ということになるわけで、これもまた本好きな人の楽しみ方であることに違いはありません。だって、勝井さんが装丁された本は、それなりの内容であることがわかっているから。
●今回の金沢文芸館での展示イベントが、龜鳴屋さんの新しい飛躍の出発点になることを祈りたいと思います。
味わい深い装丁60冊 金沢文芸館 きょうから龜鳴屋展
(中日新聞 2007年7月12日)
忘れられたり、世に知られない作家たちの作品を凝りに凝った装丁で出版してきた「龜鳴屋(かめなくや)」(金沢市大和町、主人・勝井隆則氏)の書籍を集めた「金沢の小さな版元 龜鳴屋〜知られざる作家たちの本」展が十二日から、尾張町の金沢文芸館(兼近靖志館長)で始まる。三十日まで。入館料百円。(中略)各本の制作エピソードを物語る貴重な原資料、各作家の紹介など資料七十点余りも懇切な説明と共に展示され、龜鳴屋の八年の歩みが一覧できる。
<龜鳴屋本>
○「宮崎孝政全詩集」(1999年刊) …第一冊目
○伊藤人誉著「馬込の家−室生犀星断章」特装本 …五冊目、室生犀星宅ゆかりのミニ竹垣を紙箱に施し、NHK教育テレビ「美の壺」にも取り上げられた
○「伊藤茂次詩集 ないしょ」(2007年3月刊) …六冊目、初の文庫本
○「中村薺(なずな)詩集」(2004年刊) …泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞、装丁は名匠・金田理恵さん(東京)
○「大野直子さん(金沢市粟崎)詩集 寡黙な家」 …今年の中日詩賞新人賞、装丁は名匠・金田理恵さん(東京)
他 約60冊を展示
金沢文芸館へ行こう!: 文芸館で龜鳴屋の世界に浸ろう!!●最近は全国的に書店の巨大化が進んでいますが、あの、北陸最大スケールの明文堂書店でも絶対に置いていない本が、ここにあります。希少価値大です。
●龜は亀の旧字だと思いますが、勝井さんはウサギとカメの亀のような人生を目指しておられるのでしょうか。でも、亀が鳴くとはどういうことなんでしょう。そもそも亀の鳴き声って、聞いたことあります? すごい想像力を求められる屋号ですね。
龜鳴屋|
金沢文芸館