金沢の坂1―「W坂」と「つばや坂」 金沢遠望

2006年09月28日



金沢の坂1―「W坂」と「つばや坂」

●金沢市のメルマガ「いいね金沢倶楽部」第46号(2006/8/25配信)に、「暮らしの坂・つばや坂」、という記事がありました。寺町5丁目の老舗高級料亭「つば甚(じん)」から、その北側の崖下を流れる犀川沿いの道路に通じている小さな坂で、周辺住民しか知らない生活道路とのこと。

つば甚は金沢でもっとも有名な料亭のひとつで、特別なイベント時くらいしか、私たち庶民には入れないところです。泉野・桜木神社の近くにあった私の父の養父母の家へ遊びにいくとき、野田行きの電車やバスがこの料亭の前を通っており、そのたびに、「ここは高い料理屋やぞ、ちょっとやそこらじゃ入れんがやぞ」と、何度も父母から聞かされていた料亭です。

●子どもの私としては、ヘンな名前と大きな門構え、という印象だけでしたが、さすがに高校生ともなると、「エライ政治家やお役人が密談するところか」といったひねくれた見方もしてました。当時は生意気盛りでしたから。

●最近、つば甚のホームページを見て、その料理の値段を初めて知りました。確かに安くはなかったですが、意外にも、一般の高級レストランと比べてそれほど高いようには思えませんでした。もちろん、ふだんの食事に使える場所ではありませんが、観光で訪れる古都にある料亭としては、ちょっと贅沢、といったレベルで、何とか手の届く範囲ではないでしょうか。料理は申し分なし、しかしそれ以上に雰囲気がよさそうです。

 創業宝暦二年 料亭つば甚

●ちなみに、季節を愛でる加賀会席「季寄せ」の9月のメニューは、「重陽」。お値段は、10,000円(サービス料・税込)となってました。

 <付出> 衣被ぎ 茶豆 百合根茶巾
 <八寸> うさぎ香合 かきのもと 烏賊菊花寿し 菊かぼす 梅貝
 <吸物> 萩真薯 柚子他
 <造り> 平目菊花包み 甘海老 赤烏賊
 <焼物> 子持ち鮎
 <焚き合せ> 小芋、南瓜、海老、隠元
 <一品> 松茸 鱧 鳴門揚げ
 <酢の物> 焼霜かます 蓮芋 三つ葉 花穂 菊花
 <留>   栗おこわ 汁
 <果物> 季節の物

●これで10,000円なら、けっこうお値打ちでは?

●話が脱線してしまいました。この「つば甚」の横を通っている「つばや坂」は、メルマガではこんな風に紹介されてました。

 手すりもない簡単な造り、竹林が繁茂する崖に苔むす石段がぶっきらぼうに伸びているだけの坂ですが、しかしなぜか心惹かれる坂。時々ふとした瞬間にこの素朴で飾り気のないつばや坂の情景が脳裡に浮かんできて、無性に訪れたくなります。
 ちょうど階段が二つ折れになる真ん中あたりには、畳2畳分ほどの踊り場が造られていて、そこはまるで一人芝居のステージみたいな場所。踊り場に佇んで金沢のほどほどの大きさの繁華街、犀川に釣り糸を垂れる人や緑地で憩う人々を見下ろしていると、嫌なことや悲しいことがスーッと心から消えていくから不思議です。

●雰囲気がありますね。一度歩いてみてこようと思います。

●そして、そこから300mほど上手にあるW坂。この坂は桜橋の西南端と寺町台のあいだにある坂で、観光スポットとしてかなり有名になりました。W坂もつばや坂のように、途中に踊り場があります。

●メルマガのつばや坂の記事を読み、私ははるか昔のW坂のことを思い出していました。

●小学校4、5年の夏休みの時、泉野の祖父母の家に“初めて一人で泊まりに”行くことになりました。香林坊から泉野まで歩いていったのですが、その時、このW坂の踊り場で後ろを振り返り、片町方面を眺めると、突然、街の灯を通して実家の父母弟妹の顔が浮かんできて、涙が止まらなくなったのです。

●子どもだったんですね。一人で外泊することが急に寂しくなったんでしょう。でも、その時は人生の終わりにきたような辛く悲しい思いにとらわれました。何なんでしょう。今から思うとずいぶん中途半端な数の繁華街のネオンサインでしたが、当時はものすごく郷愁を感じ、切なさがこみあげてきたんです。今から行く祖父母の家のあたりは真っ暗闇だったし…って、泉野は住宅街なので当たり前だったのですが。

●これは一度だけの体験でした。その後、何度も祖父母の家に遊びに行き、最後は1年間ほど下宿までさせてもらいました。

●今振り返ると、あの時の涙で何かがふっきれた感じでしたね。まだ小学生でしたが、大人への旅の第一歩だったのかも知れません。


るんるん金沢ワンポイント観光ガイド―坂の街、金沢を歩いてみましょう

つばや坂W坂。両方とも夜道は危険ですが、夜道のほうが雰囲気がありますよ。今度、だれかと一緒に歩いてみてください。
予算に余裕のある方は、ぜひ一度つば甚にも。


posted by kenbo | 石川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 金沢の美景 | 金沢遠望 TOPへ
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