ハープと朗読 打ち合わせ 金沢出身歌人の世界を入念に
24日、宇多須神社で本番 東山『響会』
(中日新聞 2007年6月20日)
金沢市東山周辺の寺で朗読を交えたコンサートを開いている東山「響会(ひびきかい)」が二十四日、同所の宇多須神社でハープの音にのせて、金沢市出身の歌人尾山篤二郎の作品を朗読する会を開く。(中略)
●金沢市出身の歌人・国文学者、尾山篤二郎(おやま とくじろう)―私も知らない方ですが、明治から昭和にかけて、東京、名古屋、金沢と、漂泊の生活を続けながら、短歌、歌論、古典和歌研究に一生を捧げた歌人です。
といっても、ピンとくる人は少ないですよね。
尾山篤二郎
歌人・国文学者 明治22年(1889)〜昭和38年(1963)
在郷時代室生犀星、田辺孝次らと交友。若山牧水の「創作」、その他の同人となる。古典、ことに西行の影響を受ける。また万葉集や西行の研究者としても有名。主宰誌「芸林」。
○別号 刈萱、秋人、無柯亭主人
○浅野川に程近い金沢市横安江町生まれ、父親は雑貨商
○明治33年、金沢商業入学、同36年膝関節結核によって右足を大腿部から切断
○中学を中退の後、歌人をめざす
○大正2年、処女歌集「さすらい」)出版
○東京、名古屋、金沢、旅と漂泊を続けながら、短歌、歌論、古典和歌研究を発表
○昭和21年、歌集「とふのすがごも」、同23年「大伴家持研究」などの業績で同26年芸術院賞
○残した歌集は11、収められた歌は7288首
○犀川・下菊橋付近に尾山篤二郎生誕百年記念碑、兼六園と本多の森の間に歌碑、浅野川常磐橋詰に歌碑
石川県関係人物文献検索―尾山篤二郎―石川県立図書館
●明治の人には共通した気骨を感じます。K前首相の「骨太の方針」、A現首相の「美しき日本」といったうすっぺらな言葉などと比べ物にならないくらい“美しく、骨太な生き方”を貫いた、わがふるさとの歌人です。
●何よりも私が共感したのは、長年、流浪の生活をしながらも、その歌のテーマは常に「望郷」にあり、ほとんどの歌がふるさと金沢を思って作られた作品である、という点にあります。
●14歳のときに右脚切断! まさに絶望から始まった人生だったと想像されますが、篤二郎は、ふるさと金沢を強く思い、歌を詠み続けることで、命の炎を燃やし続けることができたようです。
●私など足元にも及びませんが、ふるさとを愛する気持ちの強さが、辛い日々を耐え抜く原動力になりうるということに驚かされました。
●6月24日(日)、宇多須神社で開催されるハープと朗読のコンサートで、尾山篤二郎の歌を聴いてみませんか?
宇多須神社:金沢五社の一つで、藩政期には前田家の祈祷(きとう)所であった。地元では「毘沙門さん」と呼ばれ親しまれている。
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