●金沢の環境問題というと、私は高校時代を思い出します。当時、私は受験勉強のために香林坊にあった母の実家に下宿していたのですが、1週間に1、2回ほど、野町広小路に引っ越していた実家に顔を見せることになっていて、何故かいつも歩いて帰っていました。
●香林坊〜片町〜犀川大橋〜野町広小路と、早足で歩くと30〜40分ほどです。実家で夕食を食べた後、再び香林坊まで歩いて帰っていました。けっこう面倒な日課だったのですが、夜の繁華街の一人歩きは何だか大人の仲間入りをしたような優越感も感じられて、あちらこちら興味深く眺めながら歩いていました。
●もちろん、照明の明るい表通りだったのですが、その頃の一番強烈な印象が、とくに片町を通り抜けるときの自動車の排気ガスの臭いでした。
●臭いだけではありません。少し遠目で見ると、ビルの谷間によどんでいる排気ガスが霞のように見え、繁華街のネオンサインが曇って見えるほどだったのです。夕方のラッシュアワーの後ですから、1日でもっとも空気が汚れている時間帯だったかも知れません。
●排気ガスは体によくないことはわかっていましたが、当時は公害という言葉すらなかった時代です。私はできるだけ空気を吸い込まないようにして歩きながらも、その一方で、排気ガスもまた繁華街の飾りの一つのようにも感じていたため、それ以上深く考えることはありませんでした。
●ただ、漠然と、こんな小さな町なのに、車が異常に多すぎるのではないか、とは思いましたが。
●でも、最近はまったく状況が違いますね。環境意識の高まりと、自動車のエンジン性能の飛躍的な向上によるものでしょうが、もちろん、自治体がさまざまな対策をしてきたこともあります(昔がひどすぎただけかも)。
●最近は、車の排気ガスよりも、むしろ家庭や商業施設で使われるエアコンやクーラーによる排熱の滞留が問題となってきました。
●今度は排熱か…。でも、そんなヒートアイランド現象を吹き飛ばしてくれそうな、夢のプロジェクトが生まれたようです。
海風で金沢の夏涼しく 犀川、浅野川「風の道」調査 金城大・平下教授ら
(北國新聞 2006年7月4日)
海風で夏の金沢を涼しく―。金沢の海岸から都心部への「風の道」の実態を調べる研究に、平下政美金城大教授=環境生理学=らが乗り出した。最終的に、犀川と浅野川を「風の道」として利用し、海風を冷たいまま中心街に運び込んで、真夏に都市中心部の気温が上昇する「ヒートアイランド現象」を食い止める。八月五日には市民の協力を仰ぎ、海風が何時にどこまで到達するのかを市内三百カ所で調査し、「風の道」の現状を探る。(中略)
調査は、統計上、金沢で”最も暑い日”とされる八月五日、市内三百カ所にプロジェクトに参加している金城大の学生手づくりの風速風向計を設置し、午前七時半から午後六時まで十五分置きに風速と風向を調べる。
観測地点の気温や体感温度も計測するほか、海風が川をさかのぼり始める時間、いつどこに達するか、川によって海風がどのように拡散するかなどを分析する。
平下教授は「調査結果を利用すれば、都心のクーラーからの排熱を効果的に冷やす緑地帯の設計や、市内のどの学校のグラウンドでスポーツ大会を開けば選手の体に負担が少なくなるかなどが分かるだろう」と期待を寄せている。(後略)
●数年前、たまたまヒートアイランド対策を研究している大学教授のお話を聞く機会がありましたが、その先生のエネルギッシュな話ぶりや表情を思い出しました。はっきり覚えてはいないのですが、たしか、東京のヒートアイランド対策として地下水や下水、東京湾の海水など、「水」を複合的に利用した巨大冷却システムの構想だったように思います。
●あまりにも壮大なプランで、実現の可能性があるのかないのか、まったく私にはわかりませんでしたが、その先生のお話に大きなロマンを感じ、感動しました。奇しくも、今回の金沢のヒートアイランド対策も「水」の力によるものです。
●金沢の風の通り道、それは犀川と浅野川なんですね。改めて、金沢はこの2つの川によって守られているんだなあ、と嬉しくなりました。昔、片町のビル街に溜まっていた汚れた空気も、そのそばを犀川が流れていたから、めちゃくちゃ深刻な問題に至らなかったのかも知れませんね。
●平下教授をはじめ、プロジェクトに協力されるボランティアのみなさん、がんばってください!
ヒートアイランド現象|犀川|浅野川
言われてみればそうですよねぇ、さえぎるものがない。
でも東京では川の上に高速道路があったり、川を埋め立ててしまっているので論外ですね。
犀川と浅野川は大事にしてほしい。
●海〜川〜風〜大地〜街〜人 いい流れです。それに、なんといい響きの言葉たちでしょう。
●金沢の鞍月用水が、主に景観の面から何10カ所で開渠化(暗渠 -> ふつうの橋に)されたそうですが、私は美観だけでなく、風の通り道の確保にもなったのではないかと思います。先日、香林坊109の裏手を通ったとき、そう感じました。
鞍月用水の道は歩くのにいいですよね。
あとから暗渠していたことを知りびっくりしたものです。
●成長期には、汚れた川の水を見ても、それが当たり前で仕方のないことだと、だれもが無意識に思っていたのではないでしょうか。
●これからは、美しい水が流れる川が当たり前の姿だと思うようになりたいですね。
●平下教授って、どんな先生なんでしょう。私の知っている大学教授は、いかにも、って感じの人ばかりですが…
●風の道の調査、よろしくお願いいたします。きっと貴重な体験になると思います。