●熱狂の日、といわれると何だか気恥ずかしい感じがしますが、それはともかく、ベートーベンの音楽を存分に堪能できる音楽祭「ラ・フォルジュネ金沢」が、4月29日から始まりました。5月5日まで石川県立音楽堂を主会場に全80公演が予定されています。
●「ラ・フォルジュネ」はフランス北西部の港町ナントで1995年に始まったクラシック音楽祭で、ヨーロッパの音楽祭の中でももっともエキサイティングなイベントのひとつといわれているそうです。それをそのまま日本で再現しようと企画されたのが「ラ・フォル・ジュルネ『熱狂の日』音楽祭」で、今年は金沢でも開催されることになりました。
●といっても、私もこの名前を知ったのはごく最近のことですが。
●個人的な話はさておき、今年のメインイベントは「ベートーベン」です。日本では「ダダダダーン」でおなじみの、あの「運命」の作曲家。ほとんどの小学校〜高校の音楽教室に肖像画が飾られている、あの迫力のある表情の大天才(“楽聖”でしたっけ)ベートーベン。
●軽い紹介になってファンの皆様には申し訳ありませんが、軽佻浮薄の大方の現代日本人が抱いているベートーベンのイメージは、私が小学校の音楽の授業で抱かされたイメージと同じようなステレオタイプな印象のままではないでしょうか。
●小学校1〜2年の頃どんな印象だったか、はっきりいって覚えていませんが、今想像すると、子どもとしては、難しい大人の理屈を無理やり押し付けられたという感じだったかも知れません。
●そのイメージは、高校の頃、親友の影響でクラシック音楽を真面目に聴き出してからも変わりませんでした。それくらい「ダダダダーン」のインパクトが大きかったということですね。ン十年間、ずっと、私のなかでは、ベートーベンは楽聖であり続けていました。
●そのイメージが変わったのは…
●じつは、モーツァルトの“新解釈”の伝記映画といわれた「アマデウス(1984年)」を見たのがきっかけでした(私の人生の中ではけっこう最近のことです)。
●あの映画は、もちろんモーツァルトが主人公でベートーベンは出てきませんが、中世ヨーロッパの音楽界の状況が、たぶん、ああいう感じに近かったのではないかと思わせる描かれ方でした(私にはそう思われました)。
●その頃、仕事の関係で(広告業です)ベートーベンの人生を調べる必要に迫られ、いくつかの資料本を読んでいました。また、同じ頃、偶然にも生のフルオーケストラの「運命」を聴く機会があったこともあり、何となく、ベートーベンの本当の苦しみがどこにあったのか、私なりに感じることが出来たように思えてきたのです。
●ベートーベンはダダダダーンだけではありません。交響曲、ピアノ曲、弦楽四重奏曲など、非常に多彩な音楽を作っていて、そのすべての作品に、当時の彼の音楽に賭けるストイックな情熱だけでなく、人生の悩みや苦悩が色濃く反映されています。
●ふつうの人なら、単に苦しみをわかってほしいという表現だけで終わっていたところだと思いますが、ベートーベンはその苦悩を、生きる喜びに転化(昇華)したという点が、天才と言われるゆえんです。
●あ、そうか、そうなんだ、と少しでも思われた方は幸せです。あなたはぜひ、「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2008」にお出かけください。熱狂できるかどうかわかりませんが、間違いなく、感動はできます。
ラ・フォル・ジュルネ 金沢「熱狂の日」音楽祭2008 公式ウェブサイト